新型コロナウイルス感染症が大きく影響し 財政危機が1年早く到来

健保組合の財政状況が厳しいなか、団塊の世代が後期高齢者となる2022年以降、高齢者医療制度へのさらなる拠出金負担の急増が見込まれていました(2022年危機)。しかし新型コロナウイルス感染拡大の影響により、危機が1 年早まることが懸念されています。

 ─健康保険組合連合会「令和3年度健保組合予算早期集計結果」より─

赤字組合は約8割、経常赤字5098億円

※全1,387組合(令和3年4月1日現在)中、予算データ報告があった1,330組合の数値を基に推計。

健康保険組合連合会(健保連)が発表した「令和3年度健保組合予算早期集計結果の概要」によると、健保組合全体の約8割にあたる1,080組合が赤字予算を編成し、健保組合全体での経常収支差引額は5,098億円の赤字となることがわかりました。

また、平均保険料率は前年度から0.01ポイント増えた9.23%で、被保険者1人当たり保険料負担額は前年度に比べ5,280円減の49万1,582円となっています。収支均衡に必要な財源を賄うための実質保険料率(調整保険料率を含む)は過去最高の10.06%となる見通しです。保険料率を引き上げた健保組合は115組合となりました。

これらの背景には、新型コロナウイルス感染拡大による健保財政への大きな影響があります。特定の業種(宿泊業、飲食サービス業等)において標準報酬月額、標準賞与額および経常収支差引額の悪化が著しいことなどから、平均標準報酬月額は4,744円減の37万2,794円(前年度対比▲1.3%)、平均標準賞与額は8万1,361円減の104万1,513円(同▲7.2%)となっています。

赤字額大幅増の主な要因は前期高齢者納付金の著しい伸び

令和3年度の経常収支は、経常収入額が8兆1,181億円に対し経常支出額が8兆6,279億円、差引額で5,098億円の赤字となりました。2年度予算に比べ赤字額は2,792億円も増加しています。

赤字額が大幅に増加した要因について健保連は、保険料収入の2,167億円減少(対前年度比▲2.6%)および拠出金の1,289億円増加(同3.6%)を指摘しており、なかでも前期高齢者納付金は1,007億円増加(同6.5%)となっています。

なお、保険給付費は654億円減少(同▲1.5%)を見込み4兆2,980億円、保健事業費は15億円増加(同0.3%)の4,409億円を計上しています。

後期高齢者2割負担の確実な実施を

健保財政の危機的状況のなか、現役世代の負担は限界に達し、このままでは健保組合がその一翼を担う、国民皆保険制度の存続が困難になるといえます。

健保法改正法(※)に盛り込まれた「(一定所得以上の)後期高齢者の窓口2割負担」については、具体的な実施日程が明示されていませんが、可能な限り早く設定し、世代間の負担の公平性の確保を実現すべきです。

※全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律