脂質異常症と判定されたら

血液中の脂質の値が基準から外れた状態を「脂質異常症」といいます。動脈硬化の主要な危険因子であり、放置すると動脈硬化性疾患(心疾患や脳血管疾患など)を引き起こすリスクが高まります。

 

血液中の脂質が増えすぎると血管が詰まり破裂する原因に

中性脂肪、LDLコレステロール、HDLコレステロールの検査項目のうち、いずれかが基準値から外れていると「脂質異常症」という判定になります。中性脂肪やコレステロール自体は私たちの体に必要不可欠なものですが、増えすぎると動脈硬化を招きます。とくにLDLコレステロールが高いと、それだけで強力に動脈硬化を進行させることがわかっています。

動脈硬化が進行すれば、血管が詰まったり破裂したりして、心疾患や脳血管疾患などを引き起こす可能性が高まります。これらは突然死や後遺症を招くことも多く、日本における死亡原因の約23%(※1)は心疾患や脳血管疾患によるものであり、ほとんど寝たきりの状態(要介護5)となる原因の第1位は脳梗塞をはじめとする脳血管疾患ということがわかっています(※2)。

脂質異常症と判定された人は、病気のサインに早期に気づけたということです。とりかえしのつかない事態になる前に、今から改善に取り組みましょう

※1 2020年 厚生労働省「人口動態統計(確定数)の概況」

※2 2019年 厚生労働省「国民生活基礎調査の概況」

脂質異常症の改善はまず食生活の見直しから

中性脂肪が高くなる原因は、主にアルコールや糖質のとりすぎです。中性脂肪が高い人は、飲酒量が多かったり、間食で甘いものをよく食べたりする傾向があります。また、LDLコレステロールが高くなる原因は、主に動物性脂質のとりすぎです。バターや生クリーム、肉の脂質や加工品などに多く含まれる脂質は、とりすぎると体内のLDLコレステロールを増やします。そしてコレステロールが高い人は、コレステロールが多い食品(卵、魚卵、レバーなど)の量にも注意が必要です。

さらに、食生活の見直しとともに行いたいのが継続的な運動です。コレステロール値の改善には効果が弱いですが、中性脂肪の改善や動脈硬化の予防に効果があります。コロナ禍では、外出の機会が減ったこと、テレワークで通勤時の運動量が減ったことにより、運動不足になる人が増えています。軽い運動はよい気分転換にもなりますので、休日は近所をウオーキングする、夕食後は自宅で動画を見ながらエクササイズや筋トレをするなど、とくに運動不足の解消を意識して生活してみてください。

今日からできるセルフケア

青魚を積極的に食べる

青魚の脂に含まれるn-3 系多価不飽和脂肪酸(EPA / DHA)は、 中性脂肪・コレステロール値の改善に効果があります。主に、あじ、 いわし、さば、ぶりなどに多く含まれています。食べすぎは脂質過 多になるため量には注意が必要ですが、週に数回は魚のメニューも とり入れるようにしましょう。自宅での魚料理には、調理しやすく 家に常備できる魚の缶詰もおすすめです。

脂質の多い肉類・洋菓子はできるだけ控える

豚ばら肉など脂質の多い部位の肉を避けるほか、ウインナーやミートボール等の加工品も脂質が多いので、食べる頻度には注意です。また、バターや生クリームが使われる洋菓子も脂質が多く含まれています。日々のおやつや間食は低脂質のヨーグルトや適量のフルーツにし、洋菓子は特別なときだけ楽しむようにしましょう。

自分なりに継続しやすい運動を見つける

スポーツクラブを契約したものの、行くのが億劫になり運動習慣が 続かないという人もいるのでは? たまに激しい運動をするより、 自分なりに取り組みやすい運動を継続するほうが中性脂肪の改善に 効果的です。全身を動かして遊べるフィットネスゲームや、エクサ サイズ動画を活用するなど、自分が楽しく運動できるツールを探し てみましょう。

監修 奈良 信雄(順天堂大学客員教授)