「高血圧」と判定されたら

高血圧に起因する脳心血管病(※1)死亡者数は年間約10万人と推定されています。血圧が高くなればなるほど、病気や死亡のリスクが高くなるので、「高血圧」と判定されたら早めの対策を。

 

 

 

静かに体にダメージを与え続ける高血圧

日本で高血圧の人は約4300万人と推計されており、日本人の約3人に1人が高血圧ということになります。高血圧は症状が現れにくいため、「毎年数値が高めだけど、元気だから大丈夫」と放置している方もいるのではないでしょうか。実際、高血圧の人の約7割は十分な対策をとれていません。しかし、症状がないときでも静かに体にダメージを与え続け、ある日突然脳梗塞や心筋梗塞を引き起こすのが高血圧です。このことから「サイレントキラー(静かなる殺人者)」とも言われています。

高血圧は、脳卒中や心疾患など命に関わる病気の最大の危険因子であり、これらによる死亡の約50%が高血圧(※2)に起因すると推定されています。ほかにも、腎臓病や認知症の発症リスクを高めることも明らかになっていますので、特定健診で「高血圧」と判定されたら今すぐ改善に取り組んでください。まだ高血圧でなくても、年々数値が高くなっていないか確認しておくことも大切です。

※1 脳心血管病とは、脳血管障害と心血管障害をあわせたもの
※2 最高血圧120㎜Hg・最低血圧80㎜Hgを超える血圧高値

「減塩」と「肥満改善」がとくに重要

高血圧は、食塩の過剰摂取、肥満、過度なストレスや飲酒、運動不足、遺伝や環境など、さまざまな要因が組み合わさって起こります。食塩摂取量の多い日本人にとって、高血圧改善には「減塩」が重要です。世界保健機関(WHO)が1日の食塩摂取量を5g未満にすべきとしているのに対し、日本人は約10g(※1)と2倍も摂取しています。高血圧の人は1日6g未満を目標に、麺類の汁は残すなど日頃から減塩を意識してください。子どものころから食塩摂取量を少なくしておくと、将来高血圧になる危険性を低くすることができますので、家族で減塩に取り組むのが効果的です。

また、「肥満改善」も重要で、BMI(※2)が20未満の人と比較して、25.0~29.9の人では高血圧のリスクが1.5~2.5倍になるとされています。とくに内臓脂肪が多いと動脈硬化が進行して高血圧になり、さらに動脈硬化が悪化するという悪循環に陥ります。肥満は高血圧だけでなく、糖尿病や脂質異常症、腎障害などの原因にもなります。下記を参考に、自分でできることから高血圧改善に取り組みましょう。

※1 2019年の「国民・健康栄養調査」の結果によると、国民の食塩摂取量の平均値は10.1g(男性10.9g、女性9.3g)
※2 BMI=[体重(kg)] ÷ [ 身長(m)の2乗]

今日からできるセルフケア

塩分を控える

加工品や外食は極力避け、家庭料理では塩やしょうゆを控えめに。単に薄味にするだけだと食事が楽しくなくなってしまうので、減塩タイプの調味料や、だし・スパイス・薬味などを活用しましょう。最初は少しもの足りなく感じるかもしれませんが、次第に薄味に慣れて濃い味付けがしょっぱく感じるようになります。

 

適正体重(BMI25 未満)の維持

肥満の主な原因は食べすぎと運動不足です。食べすぎは塩分のとりすぎにもつながるので食事は腹八分目で終え、1日30 分を目安にウオーキングなどの有酸素運動を行うなど、無理なくできる範囲で食事・運動習慣を改善してください。内臓脂肪が増えると血圧が上がりやすくなるため、血圧値だけでなく、日頃から体重やおなか周りもチェックしましょう。

 

ストレスとうまく付き合う

ストレスは交感神経を優位にし、血圧を上昇させます。しかし現代においては誰しもストレスがあるもの。没頭できる趣味を見つけたり、就寝前にリラックスタイムを設けたり、「ストレス解消」の時間をつくることが大切です。また、睡眠時無呼吸症候群の人も交感神経が優位になりやすいので、肥満改善や医療機関での治療に取り組みましょう。

 

監修 奈良 信雄(順天堂大学客員教授)